民法には「錯誤」という法律があります。
わかりやすくお伝えするため,
紙芝居にしてみました。
錯誤
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こちらは,A君です。
A君の両親は,犬が大好きで,A君も小さいころから,犬に囲まれて育ったため,A君も犬が大好きでした。A君は,そのような環境で育ったため,将来はペットショップを経営したいと思っていました。
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A君はとても気の優しい正確で真面目ですが,少し,おっちょこちょいなところがありました。
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ときは,2020年6月になりました。
A君は,大人になり,ペットショップの開業資金をためるため,必死に働き,ようやく,念願のペットショップを開店することができました。
やったー,ようやく,念願のペットショップを開店することができたぞ。
がんばるぞ。
さてさて,どんな特色のお店にしようかな。
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そうだ,最近,このあたりは,外国人の方が増えてきたから,外国人の方も入りやすいお店にしよう。
値段も,アメリカのドルでの価格を表示しておこうっと。
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こちらは,ショコラと名づけられたミニチュアダックスフンドです。
よし,ショコラの値段は,アメリカのドルで1000ドルにしよう。
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しかし,なんと,A君は「$」と書くべきところを「¢」と書いてしまっていました。
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ある日,お客さんがやってきました。
こちらは,B子さんです。
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きゃー,このミニチュアダックス,かっわいいー。あ,すごい目が合っちゃった。これはもう運命だわ。今すぐ,この子,引き取りたいわ。
あれ,値段が1000セントって書いてあるけど,これ,明らかに1000ドルの間違いよね。でも,それならラッキーだわ。
すみません,この子,買わせてください。
今,手持ちのお金がないので,1週間後でいいですか?
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では,この場で契約書を書いてもらえば,このまま引き取ってもらっていいですよ。
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こうして,ショコラは,B子さんに引き取られていきました。
一週間後,B子さんがお店にやってきました。
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こんにちは。先日,契約した代金,持ってきました。はい,1000¢です。
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ええっ!!1000ドルの間違いですよね。
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え,なに言ってるんですか,契約書見てくださいよ。ちゃんと単位は¢って書いてますよ。
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ええー,しまった。すみません,これ間違いなんです。1000¢なんと安すぎるじゃないですか。1000ドルの間違いなんですよ。
えー,そんなこと知りませんよ。あなたが間違ったからいけないんじゃないですか。私も間違いだとは思いましたけど,契約を結んだ以上は,今さら違うなんて言えないでしょ。
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いやいやいやいや,常識で考えてくださいよ。書き間違いだってわかるじゃないですか。代金払えないなら返してください。
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嫌です。あなたが悪いんじゃないですか。ショコラは,もう,うちの家族なんです。価格を書き間違えたあなたが悪いんです。代金は置いていきます。失礼します。
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あー,困ったぁ。帰られちゃったよ,どうしよう。そうだ,弁護士の先生に相談してみよう。
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こんにちは。今日は,どうされましたか?
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先生,お世話になっております。実は,かくかくしかじかで。
価格の単位をまちがってしまったんですよ。
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なるほどぉ。そうだったのですね。
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そういったケースは「錯誤」と言うんです。意思表示に対応する意思を欠くという場合ですね。今回のケースでいえば,1000ドルで販売しよう意思はあるが,1000セントで売る意思はなかったので,意思表示に対応する意思を欠いていますね。
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民法では,このような場合,錯誤が,法律行為の目的,及び取引の社会通念に照らして,重要なものである場合は,取消しを主張できる,と定めているんです。
この場合の値段の間違いは,重要ですし,相手方もわかっていたわけですから,裁判でも取消しが認められると思いますね。
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そうなんですね,やったー,わーいわーい,たすかった。
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こうして,A君は,再度,B子さんに丁寧に,話をしたところ,B子さんも立場を理解し,1000ドルを払うことで,お互いの納得が得られ解決となりました。
それから1か月後のことです。
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こちらは,モモと名付けられた,ミニチュアダックスです。このミニチュアダックスは,血統書のない犬だったにもかかわらず,アルバイト店員が,間違って,血統書付きの犬であるとの表示をしてしまっていました。
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ある日,お客さんがやってきました。
こちらは,Cさんです。
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お,このモモっていうミニチュアダックス元気がいいなぁ。お,血統書つきなんだ。
店員さん,すみません,自分,血統書付きのミニチュアダックスのブリーダーになって,血統書付きの子犬の繁殖をしたいので,血統書付きのメスのミニチュアダックスを探してるんですけど,この子なんか,どうですかね。
あー,そうなんですね,はい,このモモは,とても元気で,オススメですよ。
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そうなんですね,じゃあ,この子,お願いします。
はい,わかりましたー。血統書は郵送しますね。
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こうして,Cさんは,モモの代金を支払って,引き取りました。
一週間後のことです。
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あれれー,しまったー,間違えちゃってた
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モモちゃん,血統書がない犬だった。よく見たら,これ違う犬の血統書だった。しまったぁ。間違えちゃったなぁ。
まあでも,もう売買契約はすんでいるから,もう今更,引き取ってくれなんて言う人はいないだろうから,謝って許してもらおうっと。
それに,契約書には,別に,血統書のことはなにも書いてないから,それが契約条件というわけじゃないしな。
こうして,A君はCさんに事情を説明しました。
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いやいやいやいや,あなたねぇ,謝ってすむ問題じゃないでしょ。血統書ないんだったら,血統書付きの子犬の繁殖ができないんだから,意味ないですよ。代金返してくださいよ。
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いえいえ,もう契約は済んだわけですし,お引渡しも済んでるわけですから,返金はできません。
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契約書には,血統書付きが条件なんて,書いてないですからね。
血統書が契約条件だというなら,契約書に書いておくべきでしょう。
契約書に書いてあるのは,私があなたにモモを引き渡すことですから,ちゃんと引き渡しましたから,何の問題もないじゃないですか。
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こうして,両者は対立し,お互い,一歩も譲りませんでした。
そこで,A君はまた,弁護士に相談に行きました。
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こんにちは。今日は,どうされましたか?
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どうも先生,お世話になっております。
今日は,かくかくしかじかという状況でして。
A君は,弁護士に事情を説明しました。
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なるほど,そういった状況でしたか。
それはなかなか難しいですねぇ。
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そのような状況は,いわゆる動機の錯誤という状況です。
つまり,モモちゃんという犬を買うこと自体に錯誤はないのですが,その動機,つまり,血統書付きの子犬の繁殖をするためという,法律行為の基礎となる事情,つまり動機に錯誤があることになります。
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このような動機の錯誤は,その動機が相手方に表示されていた場合には,錯誤による意思表示として,取消しの対象になるんですよ。
今回,買主は血統書付きの子犬の繁殖が目的と言われていたとのことですので,動機が表示されていたと言えると思います。そのため,裁判になった場合は,錯誤を理由に,取り消されてしまう可能性が高いですね。
この錯誤と認定された場合は,血統書のことが契約書に書かれているかどうかは,関係ないんです。
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ええー,ていうことは,僕が負けちゃうっていうことですかね。
残念ながら,その可能性が高いですね。
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ええー,そんなぁー