2021年 4月 の投稿一覧

ビジネス書紹介24「超人脈術」:ブログ#300

 経営相談・ビジネスコーチングの場面で、
経営者の方から
 
「社員同士のチームワークをもっと上げたい」
「社員同士がもっとお互いに助け合うようになってほしい」
「社員同士のコミュニケーションを増やして
   情報共有や連携力を強化したい」
 
というご相談が多くあります。
 
 そこで、こういったご相談に有用な着眼点・アイデアを
増やしておきたいと思っていたところ、
 
 メンタリストで有名なDaigoさんの
「コミュ障でも5分で増やせる超人脈術」
(マキノ出版)
 
がとても勉強になりました。
 
 Daigoさんは、
英国発祥のメンタリズムを日本のメディアに初めて紹介し、
日本唯一のメンタリストとしてTV番組に出演、
その後、活動をビジネスやアカデミックな方向へ転換、
企業のビジネスアドバイザーやプロダクト開発、
作家、大学教授として活動、
ビジネスや話術から、恋愛や子育てまで
幅広いジャンルで人間心理をテーマにした著書は累計400万部
という方です。


 
 私なりの理解ではありますが、
本書で特に興味深いと思ったのは、
 
 本書では、さまざまな心理学などに関連する
研究結果が紹介されており、
これに関する分析が
とても実践に活用しやすい内容となっており、
 
 たとえば、
 
=====================
 
・2004年にアメリカの世論調査機関である
 ギャラップ社が500万人という膨大な人数を
 対象に行った、「友達が個人に与える幸福度」
 に関する調査がある。
 
・この調査によると、職場に少なくとも3人の
 気心の知れた友達がいるだけで、人生の満足度が
 96%も上昇(約2倍)
 
・同時に、自分の給料への満足度は200%上昇
 (約3倍、額面は変わらないのに)
 
・職場に最高の友達がいると感じている人は、
 仕事へのモチベーションが約700%上昇(約8倍)
 
=====================
 
 とのことです。
 
 そうすると、
冒頭のように、
経営者の方からのご相談で、
 
 社員さん同士のチームワーク、助け合い、
コミュニケーションを強化したいというお話は、
 
 社員さんの人生の満足度(約2倍)、
給料への満足度(約3倍)、
モチベーション上昇(約8倍)につながり、
 
 社員さんにとっても会社にとっても、
良いこと尽くしであると思いました。
 
 経営者の方は、
この研究結果は知らなかったとしても、
直感的にこういうことに気づいているからこそ、
チームワークを良くしたいというご相談が、
とても多いのかもしれないと思いました。
  
 こういったご相談をいただいた際には、
現状を詳しくお聞きした上で、
どうすればその職場でチームワークをより良くできるか、
 
 現場の状況に合わせて、
一緒にアイデア出しをしているのですが、
 
 よく使われるアイデア・着眼点としては、
 
・チームワーク研修
・コーチング研修
・個人面談
・グループ面談
・チームワーク強化の仕組みづくり
(サンクスカード
 サンクスカードMVP
 小グループ飲み会補助
 小グループ旅行補助
 イベント 
 お世話係制度
 教育係制度
 失敗大賞
 家族参観日
 ペット参観日などなど)
 
などがあげられます。
 
 チームワーク向上のため、
社員研修を実施するというのは、
昔から定番であると思われ、
 
 未だに、よく行われている理由は
その効果にあると思われるのですが、
 
 特に、昔は、「飲みニュケーション」
が大きな役割を果たしていた、
 
 というのは、
お酒が好きな方が多く、
 
 上司がお酒と食事をごちそうしてくださることを
ラッキーと思う人が多く、
 
 同じ釜の飯を食った時間が長くなるほど、
そのつながりが太くなっていく、
コミュニケーションが強化されているという効果があったものの、
 
 それから、徐々に、
お酒を飲まない人が増え、
また、仕事よりもプライベートの時間をとにかく重視する、
という人も増え、価値観が多様化し、
 
 そうなってくると、
「飲みニュケーション」が成立しなくなってきている面がある、
(人によりますが・・・)
 
 そうなってくると、
業務の一環として集まる「社員研修」という場を活用して、
コミュニケーション研修をするという手段が、
やはり効果的ということで、
良く行われるのではないかと推察しております。
 
 社員研修以外にも、
職場の状況に合わせて、
さまざまな手法を用いて、
 
 職場ごとにマッチした、
チームワーク・コミュニケーションをアップさせる施策を、
トライアンドエラーが探し続けることで、
 
 社員さんの人生の満足度(約2倍)、
給料への満足度(約3倍)、
モチベーション上昇(約8倍)につながれば、
  
 社員さんにとっても会社にとっても、
良いことになると思いました。
 
 それと、上記の2倍・3倍・8倍になるという
研究結果自体を、
社内で共有することにも、
意味があるのではないかと思いました。
 
  
 
 ところで、本書では、 
「人脈術」のみならず
「幸せ・幸福」という深いテーマに触れられており、
 
 たとえば、
 
=====================
 
・幸福度の研究によれば、
 私たちが最も幸せを感じるのは、
 「自分の人生を自分でコントロールしている感覚」
 を持てているとき
 
・ストレスのない人間関係を作ること。
 自分を取り巻く人脈を、
 自らの意志で選択できること。
 それは、
 「自分の人生を自分でコントロールしている感覚」
 と密接につながる
 
・対人関係の充実が、
 幸福への一番の近道だと言える
 
・ハーバード大学やブリンストン大学の
 研究チームによる論文は、
 「年収が800万円を超えると
 幸福度は上昇しなくなる」と指摘し、
 「持っている金銭の多寡よりも、
 お金の使い方、休暇の過ごし方が重要」
 と分析している
 
・この種のどの研究にも共通しているのは、
 「お金を稼げば稼ぐほど幸せになるわけではない」
 ということ
 
======================
 
 とのこと。
 
 特に、興味深いと思ったのは、
たとえば、素朴なことですが、
 
 朝、一日の予定・スケジュール・やることの目標を立てて、
実際に、一日、そのとおりに予定をすべてこなせると、
とても充実した気持ちになれるのは、
 
 この「人生を自分でコントロールしている感覚」
に共通するものがあるのかもしれないと思いました。
 
 また、「柔軟計画カード」と名付けて、
名刺サイズのカードに、
毎月の目標を書いて一日一回それを見る、
 
 見たらカードの裏面の日付に丸をつける
(裏面がカレンダーになっている)、
 
というカードの丸付けを毎日やっているのですが、
一か月全部の日に、丸をつけられると達成感があります。
 
 これも、「人生を自分でコントロールしている感覚」
に共通するものがあるのかもしれないと思いました。
 
(柔軟計画カードは、社員研修の宿題的位置づけで、
 モチベーションキープ・行動管理サポートのために
 生まれたものです)
 
 さらに、A4サイズの用紙に書いている
「柔軟事業計画書」と名付けて、
柔軟に変更OKな「事業計画書」を作っており、
 
 これもスパンは一年間ですが、
ざっくりとした事業の計画をつくり、
毎月、その進捗を確認したり、
計画を修正するたびに、
 
 少しでも進行していることを確認できて実感が湧いたり、
「こうなったらいいな」ということをイメージして、
モチベーションキープになったりと、
 
 これも「人生を自分でコントロールしている感覚」
に共通するものがあるのかもしれないと思いました。
 
 本書は、ほかにも、
さまざまな興味深い研究結果がたくさん掲載されており、
とても面白く読ませていただきました。
 
 ありがとうございました。 

ビジネス書紹介23「JALの心づかい」:ブログ#299

 経営相談・ビジネスコーチングの場面において、
コロナの影響で、落ちてしまった業績をいかに
回復させるか、というご相談が増えています。
 
 経営者の方と一緒に、
あれこれ知恵を絞ってアイデア出しをしているのですが、
 
 そのようなときのために、
日頃からアイデア出しの着眼点を
増やしたいと思っているところ、
 
 奇跡的なV字回復を果たした
JALの例が参考になるのではと思いました。
 
 JALは、
2010年1月、2兆3千億円という巨額の負債を抱えて倒産し、
会社更生法に基づく手続きを申請しました。
 それが、なんと、一年後には、
過去最高の営業利益1800億円を達成、
二年後には営業利益2000億円を達成、
されました。
 
 今、コロナで大変な思いをしている人にとっても、
このV字回復劇は、勉強になることが沢山ある
のではないかと思いました。
 
 そこで、
 
「JALの心づかい~
  グランドスタッフが実践する究極のサービス」
上坂徹(河出書房新社)
 
を拝読しました。
 
 著者の上坂徹先生は、
経営、金融、ベンチャーをテーマに、
雑誌や書籍で幅広く執筆やインタビューを手掛けておられ、
著書に、ベストセラーとなった「プロ論。」や、
 
「あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNO.1大学になったのか?」
「僕がグーグルで成長できた理由」など、
多数の著書があります。
 
 本書執筆にあたり、
様々な取材をされたそうです。
 
 私なりの理解ですが、
以下、特に本書で興味深く感じたのは、
 
==============================
 
「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社になる」
というビジョンがあって、
 
 そのために、お客さまを中心に発想する、
 そのために、まずは社員を大切にする、
 
 第一は安全、次に人財への教育投資に力をれる、
 社員は会社の「財」(たから)だから、

とのこと。
  
 また、
教育投資が何を変えたのかというと、
実は働くスタッフのモチベーション、
 
 これこそがJALを大きく変えたもの、
 
 教育を通じてスキルが上がれば、
お客様に喜んでいただく機会が増える、
それは自身の喜びにもつながる、
それがまた好印象をつくる、
そんな好循環が生まれる、
 
 教育の中心に据えられているものが、
「JALフィロソフィ」、
 
 これがすべての思考と行動のベースとなる、
 
とのこと。
 
==============================
 
 JALフィロソフィは、
経営破綻から1年後の2011年1月19日に発表された
社員の行動哲学ともいうべきもので、
40項目あり、JALのウェブサイトでも紹介されています。
 
 フィロソフィといえば、
京セラフィロソフィが有名ですが、
JALの再生をリードしたのは、
まさに京セラ創業者の稲森和夫先生で、
稲森先生がJAL再生の課題としてとらえていたのが、
全社員の意識改革だったそうです。
 
 そこで、JALフィロソフィが策定され、
策定するのみならず、
グループ全社員が年に3回JALフィロソフィを学ぶ教育を受講したり、
JALフィロソフィに即した行動について発表する「発表会」を開催したり、
役職が上になるほどJALフィロソフィ教育の機会が増え、
管理職3500人は、年に1回から2回、二時間半のリーダー教育、
部長級社員や役員は毎月3時間のリーダー勉強会があったり、

 ほかにも、職場によっては、
JALフィロソフィの一項目を
「今日のJALフィロソフィ」に設定して、
「こう実行していこうと思う」
「こうすればJALフィロソフィに沿った行動になると思う」
といった発表を毎日のように行っているそうです。
 
 経営相談・ビジネスコーチングの場面において、
人財育成に力をいれたい、
全社員の方向性を定めていきたい、
そのために、
ビジョンや行動指針を策定したいというご相談も多く、
 
 しかし、
昔、実際に作ってみたもののそのままになっている、
というご相談も多くあり、
 
 「策定」するのみならず「浸透」も大切であるところ、
JALではここまで徹底されていることから、
いかに「浸透」させることが重要であるか、
再認識しました。
 
 私の経験談ですと
昔、とある企業様で、
女性社員さんの発案で、
行動指針を名刺サイズのカードに印刷して、
ラミネート加工をして、
毎朝復唱しようという提案がなされ、
 
 実施してみたら、
格段に社員さんの意識共有がしやすくなった、
ということがありましたので、
やはり、会社様ごとにフィットした
「浸透方法」を模索し続ける必要があると思いました。
 
 また、本書で紹介されていたエピソードとして
興味深いと思ったのは、
 
 福島正伸先生の「メンタリング・マネジメント」
でも紹介されていた「ミラー効果」に近い・類似するエピソードで、

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●人財育成担当の教官が、
なかなか笑顔が出せない訓練生が多いクラスを担当した際、
 
 訓練生から笑顔が出なくて悩んでいたところ、
 
 まず、自分が笑顔が出ていないことに気づき、
まず教官が訓練生の成長を楽しんで教育するようにしたところ、
それが訓練生に伝わるようになった、
 
●JALフィロソフィが訓練内容に入ってきた当初、
なかなか訓練生に伝わっていきにくかったものの、
だんだんわかってきたのは、
 
 暗唱したり、書いたりしたところで、
伝わっていくものではなく、
 
 教える教官たちがまさに
JALフィロソフィの体現者でなければいけない、
まず、自分たちが本気になる必要があった、
 
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 とのエピソードが印象的でした。
 
 JALでは、
一人ひとりが、本気で、
JALフィロソフィの体現者になっているからこそ、
現場で輝いているし、
それが次世代にも伝わっていくのだなぁと
思いました。
 
 上記の行動指針カードを発案した女性社員さんのエピソードも、
カードを作ることに意味があるというより、
 
 本気になって行動した彼女に、
まわりが影響を受けたのかもしれないと思いました。
 
 そのほか、
興味深いエピソードやインタビューが沢山掲載されている本書、
とても勉強になりました。
 
 ありがとうございました。