会社経営について,
有事が起きたときにどうすべきかについて
意見交換・意識共有したい人のための
研修教材です。
有事に備えて
こちらは,A社長です。
A社長は,建設会社を経営しており,主に,ビル建設業を営んでおりました。
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他方,こちらは,中小企業診断士のBさんです。
Bさんは,A社長のところに,定期訪問に来ました。
どうも,A社長,お世話になっております。
先日はお疲れ様でした。
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あー,どうも,Bさん,先日はありがとうございました。
今日も,定期訪問にきてくださって,ありがとうございます。
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いえいえ,こちらこそ,お時間を取っていただいて,ありがとうございます。
さて,早速ですが,今日も,いろいろ,会社のことを確認していきましょう。
まず,先日の社員研修は,おつかれさまでした。社員のみなさんも,積極的に参加されていて,
ワークシートもとてもよく書かれていましたね。
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はい,先生,社員研修のあと,社員のみんなもチームワークが良くなったり,会社の雰囲気がますます良くなったりしました。ありがとうございました。
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それは良かったです。次に,先月の業績ですが,試算表を拝見したところ,引き続き,順調ですね。
はい,ありがとうございます。おかげさまで,とても順調です。
それは良かったです。
それからしばらく,A社長とBさんは打合せをして,ひと段落したときのことです。
A社長,引き続き,とても順調ですね。今日は,ほかに打合せしたいことはありますか。
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うーん,そうですね,今のところ,特にないですね。
わかりました。そうしましたら,A社長,一点ご提案があります。というのは,経営が順調であって,余裕があるときにこそ,今後の足場固め,準備,リスクマネジメントをしておいたほうが良いと思うんです。
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具体的には,リスクに備えて,準備できることは色々あります。たとえば,資金繰りを強化するために,経営が順調なときに,金融機関さんと信頼関係を構築しておくのがオススメです。具体的には,事業計画書や,月次報告書を作って,金融機関さんにみてもらったり,いまのうちから取引実績をつくったりしておくことです。いざというとき,助けてもらえるかもしれませんから。
経営が傾いてからでは遅いということがありますので,いかがですか?
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え,それって借金ですよね。借金は怖いなぁ。利息もかかっちゃうしなぁ。
たしかに,利息はかかりますが,借り入れ金を,別の口座にわけて保管しておけば,ほぼ実質無借金にできますよ。経営が順調な時ほど,いざというときのリスクに備えることがオススメです。
うーん,わかるんですけど,ちょっと,今は,リスクに備えることはまだ大丈夫だと思うので,それよりも,新規開拓活動を優先したいなって思います。
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そうでしたか,それはもちろんOKです。一応,順調な時に備えておくことの一つとして,ご提案したまでですし,私はいつでもサポートしますので。
はい,ありがとうございます。
こうして,この日のBさんの定期訪問は終了しました。
それから,二週間後のことです。
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なんと,以前から諸外国で発生していた感染症が世界に広まったため,緊急事態宣言が発令されました。
そのため,A社長の会社で行っていたビルの建設工事がすべてストップしてしまいました。
しかも,契約受注が見込まれていた新規の案件も,すべてキャンセルになってしまいました。
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そして,Bさんは,A社長に電話をかけました。
A社長,今よろしいでしょうか?緊急事態宣言が発令されましたが,ビジネスへの影響はいかがでしょうか?
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あー,先生,はい,今,工事中の現場がすべてストップになってしまいました。また,新規の案件もすべてキャンセルになってしまいました。
突然の出来事で,正直,今,混乱しています。どうすればよろしいでしょうか?
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はい,まずは落ち着いてください。まずは,状況を整理して,一つずつ,対応策を一緒に検討していきましょう。
まず,御社の場合,毎月の人件費が多いうえに,不動産賃料などの固定費がかなりかかっていますし,また協力業者さんへの支払いも多いですから,資金繰りの対策をしましょう。
取り急ぎ,金融機関からの借り入れをしましょう。
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はい,わかりました。さきほど,公的な金融機関に電話をしてみたところ,初めて借入をする人については,相談や審査が殺到していて,かなり時間がかかってしまうようです。
こんなことになるなら,B先生がおっしゃったように,いざというときに備えて,借り入れをしたり,取引実績をつくっておけばよかったと,今になって思いました。どうすればよろしいでしょうか?
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過ぎたことはもう忘れて,今からベストを尽くしましょう。さまざまな金融機関がありますので,どんどん当たっていきましょう。また,金融機関さんが審査しやすい書類を,先手を打ってこちらで作ることで,審査スピードが早まる可能性もありますから。
現状,資金繰りが回れば,落ち着きますかね?
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はい,そうですね,資金繰りさえ回れば,安心なので,あとは,じっくり耐えようと思います。
先生,わたし,今回の件で,意識が変わりました。先日,先生がおっしゃっていた,リスクに備えること,その続きを,教えてもらえますでしょうか?
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はい,色々あるのですが,まず一番に資金繰りが挙げられます。資金がないと企業を継続できないですからね。
その次に,コストカットが挙げられます。出ていくお金を少なくする必要がありますので,変動費,固定費で節約したり,交渉したりすることが必要ですね。
そのうえで,営業活動の立て直し,場合によってはビジネス自体の転換を考えることですかね。
なるほど,まず資金繰りの手当てをしてから,コストカットをして,そして,営業活動の立て直しですね,よくわかりました。
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それと,感染症など,健康に対する危険がある場合には,万一に備えて事業承継の対策を考えておく必要があるかもしれません。
万一,感染症などで,社長の健康状態に万が一のことがあったりしたときに,会社の資金繰りや,会社の株式や,会社の運営がどうなるのか,という点は心配です。
社長には,ご子息が四人いらっしゃって,専務であるご長男以外の方は,会社に関与していらっしゃらないので,いまのうちに,遺言書を用意したり,相続税の対策,生命保険の活用などをしておくことが考えられますね。
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なるほど,言われてみればそうですね。感染症というのは何が起こるかわかりませんから,今こそ,準備をしておこうと思います。
Bさん,これからやるべきことがわかりました。ありがとうございます。がんばります。