モデル事件:フジ興産事件
今回は,労働法判例百選にも掲載されている,就業規則の周知に関する判例として有名な,最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決「フジ興産事件」をモデルにしたストーリーを,紙芝居型で,お伝えします。(あくまでモデルであり,実際の事件とは異なる部分があります。)
こちらは,Xさんです。
Xさんは,Y社で,正社員として入社し,働いていました。
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他方,こちらは,Y社長です。
Y社長は,Xさんが勤務する会社の社長です。
Y社長は,会社の就業規則を変更し従業員に対する懲戒解雇の規定を,新しくすることを考えていました。
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うーん,うちも,徐々に従業員が多くなってきたので,就業規則とか,会社のルール整備をしっかりしないとな。
特に,会社内の規律・秩序を乱す従業員に対しては,最悪の場合は懲戒解雇もできるように,就業規則を,新しくしておかなければならないな。
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こうして,Y社長は,会社の就業規則を改訂し,懲戒解雇の規定を新設しました。
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よーし,これで,万が一のときには,従業員に対して,問題なく懲戒解雇ができるな。準備は万端だ。
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しかし,このとき,Y社長は,就業規則の中身を新しくしたものの,その就業規則を社内に備え置いたりするなど,従業員に周知することを忘れてしまっていました。
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ある日のことです。
Xさんが,お得意先のA社からの要望に応じなかったため,トラブルになりました。
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おい,Xくん,君,なんてことをしてくれたんだ。お得意先のA社さん,とっても怒ってたぞ。わが社はサービスの悪い会社だと,言っているらしい。まったく,気を付けてくれよ。
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はあ,すんません。
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また,ある日のことです。
こちらは,Xさんの上司のBさんです。
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Xさんは,上司のBさんに反抗的な態度をとり,暴言を吐きました。
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ちょっとちょっとB先輩,B先輩の指示はいつも間違ってるんですよ。なんですか,このひどい業務指示は。全然仕事わかってないんじゃないっすか。こんなのやってらんないっすよ。
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なにー,いったいどういうことだ。すくなくとも,私は君の上司だぞ。上司に対して,その態度はなんだ
Xさんは,たびたび,職場でこういった態度を取っていたことからその後,,とうとう,会社から,懲戒解雇されることになってしまいました。
Xさんは納得がいかず,Xさんは裁判を起こしました。
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こちらは,裁判所の裁判官です。
静粛に。今から裁判を始めます。
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まず,Xさんは次のような主張をしました。
裁判長,今回,新しくなった会社の就業規則は,会社に備え置かれていませんでした。
したがって,この就業規則は周知の手続がされていなかったということです。
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そのため,今回の就業規則に基づく懲戒解雇は無効です。
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これに対して,Y社長は,次のように反論しました。
裁判長。就業規則は,労働者の過半数代表の同意を得たり,労働基準監督署長への届け出をするなど,ちゃんと作られたものです。そのため,会社に備え置くのを忘れていたくらいでは無効になるなんておかしいです。
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そのため,Xさんに対する懲戒解雇は有効です。
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このように,XさんとY社長の主張は,真っ向から対立しました。
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それでは,これから,判決を言い渡します。
主文,Xさんが,Y社に対し,労働契約上の地位にあることを,確認する。
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やったー,ぼくの主張が認めてもらえたんだ
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ええー,そんな,そんなのおかしいぞ。いったい,どういうことなんだ
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説明します。
会社が就業規則を作成したり,その内容を変更した場合には,労働者代表の意見を聞いたり,労働基準監督署長の届けるほか,従業員への周知の手続をしなければなりません。
今回は,その周知の手続をしていなかったため,周知の手続をしていなかった就業規則を根拠とする懲戒解雇は,認められません。
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ええー,そんなー