ある会社に対し,従業員の方が,
裁判で給料や残業代を請求した場合,
所得税や社会保険料の源泉徴収はどうなるでしょうか?
結論として,
実は,裁判で給料や残業代を請求する場合,
所得税や社会保険料の源泉徴収分は,
控除しない金額を請求するのが実務なのです。
この取り扱いに違和感を感じる方もいるかもしれません。
この場合,
従業員の方が勝訴すれば,
所得税や社会保険料の源泉分を控除しない金額で,
判決文が作られます。
そうすると,
その控除しない金額で,
強制執行されてしまいます。
この場合,
どうなるかというと,
強制執行されたのち,
会社のほうで,
従業員に対して,
源泉分を請求して支払ってもらい,
その後,会社のほうで,
納付するという流れになってしまいます。
この時に,
従業員の方の行方がわからなかったり,
源泉分の支払いが不可能な状態であった場合は,
実際上は,
会社のほうで,源泉分を負担することになってしまい,
実際上,二重払いになってしまうリスクがあります。
そこで,
強制執行される前に,
「請求異議の訴え」という方法があります。
簡単に言うと,
裁判で確定してしまった,
所得税・社会保険料が控除されていない金額を,
強制執行される前に,
所得税・社会保険料を控除する金額に変更するような
手続をすることができます。
以上のような流れがあり得るため,
やはり,裁判になってしまう前に,
この源泉の取り扱いも含め,
和解による解決が望ましいことが多いと思われます。
さらに言えば,
そもそも,
法的トラブルが起こらないよう
予防することが理想ですね。