休業手当の誤解に注意 #30

意外と誤解されているのが,
休業手当です。

どういうことかというと,

よくある質問で,
「休業手当は,
平均賃金の6割を支払えば,良いんですよね?」

という質問があります。

しかし,
これは誤解されていることが多いです。

たしかに,労基法26条には、
休業手当の規定があり、

同条は,使用者の都合による休業の場合は,
「平均賃金の6割」を支払わなければならないと規定しています。

これは,一見すると,
休業の際は、労働者の方に
平均賃金の6割を支払えば良い
と規定しているようにも思えます。

しかし、
よく考えてみると、

事業主の都合で、
労働者の方が労働できなかったにもかかわらず、
労働者の方が6割の賃金しかもえらないとなると、
労働者の方としては、
不満に思うのも当然ですよね。

そこで,民法536条2項には、
このような場面を想定した規定があります。
同条項は、難しい言葉でいうと,
「危険負担の債権者主義」
という概念を規定しておりまして、

簡単に言ってしまうと,
会社の都合で,労働者の方が働けなかった場合は,
労働者の方は賃金の支払いを受ける権利を失わない
(6割という限定はない)ということです。

そうすると、
この労基法26条と、民法536条2項は、
矛盾しているようにも思えます。

しかし、矛盾はしてないのです。
どういうことかというと,
この点については、
後述のとおり,
昭和22・12・15基発502号
という通達のようなものが出ており,

これには,労基法26条は、
休業の際,平均賃金の6割の手当額を支払わないと,
労基法違反となってしまうということを規定しているのみで、

民法の規定を排除しているわけではない
と説明されています。

つまり,民法上請求できる金額と,
労基法違反になるか否かの基準となる金額は,
異なるということです。

結局,民法上は,労働者の方は、6割にとどまらず、10割,
つまり全額の休業補償を要求する権利があるが,

使用者は,最低限,6割をもらっていれば,
労基法違反にはならないということです。

したがいまして、
このようなケースにおいて、
労働者の方が民事裁判を提起した場合には、
6割ではなく,
全額の支払いを求めることができるのが原則論になります。

(例外もあります)

参考:昭和22・12・15基発502号
「本条は,民法の一般原則が
労働者の最低生活保障について
不十分である事実にかんがみ,
強行法規で平均賃金の一〇〇分の六〇
までを保障せんとする規定
であって民法の第五三六条第二項
の規定を排除するものではない。」

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