今回は,
不当解雇裁判の流れについて,
紙芝居型でお伝えします。
今回は,通常版と異なり,
ブラック社長バージョンです。
(学習の便宜のため,
実際の裁判とは異なる部分があります)
こちらはA君です。
A君は、新卒で、
食品の卸売り会社の
営業マンとして入社しました。
>
A君は,
まじめな頑張り屋さんでした。
新社会人として、
毎日を一生懸命がんばっていました。
>
あー、今日も忙しい、
毎日,あちこち駆け回ってるなぁ。
これが社会人生活ってやつかぁ。
でも、毎日充実しているなー
A君は,毎日必死にがんばって,1年が過ぎました。
>
他方,こちらはB社長です。
B社長は,裸一貫で東京へ状況し,
必死に働いて,現在は,
従業員を100名抱える社長です
>
最近の不況で,B社長は,
会社の状況がどんどん
悪くなっていると感じておりました。
うーん,まずいなぁ。
会社の業績がどんどん落ちてる。
これはちょっと経費削減
しなければいけないな。
どうしようかな。
>
そうだ,まずは,やっぱり,
一番若い社員にやめてもらおう。
一番若い社員は,
会社への貢献度もまだ低いからな。
それに若い社員なら,
ほかの会社でやっていけるだろうし。
うちで一番若い社員はA君だな。
よし,A君をやめさせよう。
>
じゃあ,どうやってやめさせようかな。
いきなりだとびっくりするだろうしなぁ
そうだ,A君が業務でなにかミスをしたら,
それを理由にしよう
>
ある日のことです、
会社にいたA君に、
先輩のCさんから電話がかかってきました。
Aくん、Cさんから電話ですよ。
なんだか怒っている様子です。
ええ、僕ですか。
なんだろうなあ。はい,もしもし,
>
Aくん、君は納品ミスをしてくれたね。
これで2か月連続じゃないか。
すいません、申し訳ございません。
まあ,二回とも,
私がフォローしておいたから,
特に問題は発生しなかったからいいけど,
もう二度とこんなミスをしてないでくれよ。
本当に申し訳ございません。
>
はー、こまったこまった
また社長におこられちゃう。
前回ミスしたときも,
こっぴどく怒られたからなぁ。
はー,嫌だなあ。
社長,怒り出したら,とまらないからなぁ。
>
事情を聞いたB社長が,
外出から戻ってきました。
おー,A君,おつかれさま。
先輩のCさんにまた怒られてしまったらしいね。
大変だったね。疲れただろう。
ところで,ちょっと社長室に来てくれ。
>
あれ,社長,全然怒ってない。
なんでだろう。まあいいか,助かったー
コンコン,失礼します。
社長,なんでしょうか?
>
今日は,A君に話があってね。
先日も納品ミスをして,
今日も納品ミスしてしまったね。
でも私は全然怒ってないんだ。
そんなときもあるだろう。
仕方ないよ。いいんだ。
ただね,A君には,
この仕事,向いてないと思うんだ。
君には,
君の才能をもっと活かせる
仕事があると思うんだ。どうだね,
どこかほかの会社に行ってみないか?
>
いえ,自分は今の仕事が大好きですから
やめたくないんです。
いやいや,
A君にはもっと向いている仕事があるよ
いえいえ,
私は会社が大好きなんです。どうかこのまま働かせください。
いーや,君にはほかの会社のほうが合ってるよ
そんな、どうか、どうかここで働かせてください。
>
君ねぇ。今日も納品ミスして,
こないだもミスして,
会社にどれだけ迷惑を
かけていると思っているんだ。
全く。もう会社に君の居場所はないんだ。
>
そんな,自分は,先月、
こどもがうまれたばかりで、
今、自分が必死にがんばらなければ、
妻と子どもを食べさせていけないんです。
どうか、このとおりです。
>
うるさい。
2ヶ月連続で納品ミスを
しておきながら何を言っているんだ。
きみはクビにする。
君にはね,
30日分の給料を上乗せして払う。
そうすれば,法律上,
会社は君をクビにできるんだ。
>
ええー,そうなんですかー,そんなー
こうして、Aくんは、
泣きながら、退社しました。
>
A君は途方に暮れていました。
A君は,たまたま
インターネットを見ていたところ,
「知らないと損する労働法」
というホームページを見ていました。
>
え,なにこれ,ええー,
30日分の給料払えばクビにできるは誤解!
>
日本の労働法では,
クビはなかなかむずかしい!!
へー,そうなの,
>
詳しくは,お近くの社会保険労務士まで。
へー,そうなんだ,ちょっと,相談に行ってみよう。
>
こちらは,社会保険労務士さんです
こんにちは。今日は,どういったご相談ですか?
>
はい,僕,会社をクビになってしまいまして。
>
そうでしたか,それはどうしてですか?
>
二か月連続で納品ミスをしてしまいまして。
社長から,法律では,
30日分の給料払えばクビにできると言われました。
A君はくわしく事情を説明しました。
>
そういう説明をされたのですね,
実は,それ,よくある誤解なんです。
>
どういうことかというと,
解雇予告手当という
法律・ルールがあって,
クビ,つまり解雇をするには,
30日以上前に予告をしなければならない,
もし,その予告が間に合わないのであれば,
その間に合わない期間に対応した分の
お給料を払わなければならない
という法律・ルールがあるんです。
>
これをみなさん,
誤解してしまって,
30日分払えばクビ・解雇できる
と誤解してしまっている人が多いんですが,
そうではなくて,
これは解雇の予告に関するルールであって,
実際に解雇が認められるかどうかは,
また別のお話なんです。
そして,日本では,
解雇が有効になるには
かなりハードルが高いと言われています。
なかなか解雇は難しいということですね。
>
ええ,そうだったんですか,
社長がクビと言ったら,
クビだと思ってました。
>
はい,みなさん,
意外と知らないのですが,
実はそうなんです。
知らないと損することって,
実はたくさんあるんですよ。
今回のケースだと,
たしかに納品ミスをしてしまっていますが,
それについて,
具体的な損害は発生しなかった
ということであるし,
会社から解雇以外の処分を受けたこともないし,
配置転換等もされていない
ということなので,
法律的には,
今回の解雇は無効かもしれないですね。
少なくとも,
30日分のお給料を払えば解雇できる
という説明は,間違ってますよ。
>
そうだったんですか。知らなかった。
ということは,僕,
騙されてたんですね,くやしいですっ
>
二ヶ月後のことです。
あー青空の下のゴルフは気持ちがいいねぇ。
うーん、我ながらナイスショット
>
ブルルルルル
おや、電話だ。
秘書のD子くんからだ。
もしもし,なんだね。
社長、大変です。
>
東京地方裁判所から、
書類がきました。
書類の中身は,
訴状となっています。
なにー!!
>
はい。原告は、Aくん、
被告は会社となっています。
A君は不当解雇だと主張しているそうです。
>
いったいどういうことだ。
なんで、我が社が被告にされるんだ。
納得がいかないぞ。
A君のミスが原因なんだし,
ちゃんと30日分の給料も上乗せしたんだし,
不当解雇なはずがない。
>
こうして、裁判所での裁判が始まりました。
>
まあ、裁判なんて堅苦しいことやってるけど,
Aくんはあれだけ
ひどい仕事をしたんだから、
クビで当然だろう。
30日分の給料も上乗せしたから、
我が社が負けるはずがない。
>
裁判は、一年かかりました。
一年後、いよいよ判決の日になりました。
傍聴席では、判決をまつ人が集まっています。
静粛に,判決を言い渡します
判決主文 Aくんには,
会社の従業員としての地位を,認めます。
>
また、会社は、A君にたいし、
解雇から本日までの一年分の賃金
500万円をはらいなさい。
>
ええ、我が社の完全敗訴ではないか。
しかも、この一年間の
給料500万円を払えなんて、額が多すぎる。
なぜ、我が社がまけてしまったんだー なぜだー
(あくまで一例であり,ケースバイケースです。)