「30分ミニ社員研修教材」
会社を経営する立場になってみると,
景色が違って見えること,
紙芝居にしてみました。
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<あなたが社長ならどうする?>
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こちらは,A君です。A君は,もともとデザイン制作が大好きであったことから,新卒で、デザイン制作会社に入社しました。
やったー,あこがれのデザイン制作会社に入社できたぞ。
もうあとは,毎日,燃え尽きるまで,我武者羅にがんばるだけだぞ,よし,がんばるぞ!!
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そして,5年が過ぎました。
この5年間,A君はものすごいモチベーションで毎日をがんばっていました。
そして,ある日のことです。
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僕も,入社して,5年もたったのかぁ。
振り返ってみると,あっという間だったなぁ。
この5年間,我武者羅に働いて,自分で言うのもなんだけど,同期の2倍はがんばった。おかげで,同期の中で,5年間ずっとナンバーワンの成績をとることができたぞ。
すごい達成感があるなぁ。
デザイン制作の仕事はもう一人でできるようになったから,いよいよ,僕も,独立しようかな。どうしようかな。
よし,ここは思い切って,独立して,がんばってみよう。
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こうして,A君は,独立を決意し,デザイン制作会社を立ち上げました。
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やったー,いよいよ,僕も一国一城の主になれた,会社の社長になれたぞ。ヤッター。
よーし,今まで以上に,ますます,仕事,がんばるぞ。
さてさて,まずは,いろいろと,会社を整えていかなきゃだな。
まずは社員さんを雇って,それから設備を整えて,そして,どんどん営業活動をしてもらおう。
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ある日のことです。
こちらは,社員のBさんです。
社長,すみません,今,よろしいでしょうか。
はい,Bさん,どうしましたか。
A社長,すみません,
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製図のための高機能なパソコンを買ってよいでしょうか。
え,高機能のパソコン,そうね,ちょっと,まだ売り上げ立ってないからもう少ししてからにしようかな。
いやいや社長,デザイン制作会社で高機能のパソコンがないなんておかしいですよ。お客さんが見学に来たら信用を失いますよ。
え,そ,そうかな。よしわかった。じゃあ買っていいよ。
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はい,社長,わかりました。これから人員増員するわけですから,3人分,3台買いますね。
え,ええー,ちょっと待って,まずは一台でいいんじゃないかな。まだ売り上げもたってないしさ。
いやいやいや,社長,これは先行投資ですよ。3台くらい,机並べておかないと,お客さんが見たら,怪しまれますよ。
え,え,そ,そうかな。わかった,じゃあ買っておいて。
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このようなやりとりが何回か続き,そのたびに,A君は,どんどん設備を買い込んでしまいました。
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それから,しばらく時間がたってからのことです。
こちらは,Cさんです。
Cさんは,もともとデザイン制作業界の経験が15年もあり,A君はCさんの意見を特に参考にして,会社を経営していました。
A社長,ちょっと相談があるのですが,いいですか。
おお,Cさん,はい,なんでしょうか。
A社長,すみません,うちの家内が,両親の介護の関係で仕事をやめることになってしまいまして。ただ,うちの子供,二人ともこれから大学進学でして・・・今,ちょっと困ってるんですよね。
あー,そうなんですね,それは困りましたね。
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はい,なので,社長,私のお給料もっと上げてもらえませんか。
え,お給料ですか,あのー,まだちょっと売上があまりたっていないですし,Cさんはうちで一番お給料高いのですからこれ以上はちょっと・・・
あ,そうですか。じゃあ,自分,ほかの会社探したりした方が,お互いに良いですかね?
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え,ええっ,いや,そんな,すいません,ちょっと待ってください。わかりました,わかりましたよ。お給料上げますから,そんなこと言わないでくださいよ。
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こうして,A社長は,Cさんのお給料を上げたところ,これを聞きつけたほかの社員からも,同じようにお給料をアップしてほしい,それがだめなら退職すると言われてしまい,お給料を上げることになってしまいました。
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それからまたしばらくしてからのことです。
こちらは,事務員のD子さんです。
社長,大変です。社員のCさんが,納品先の工事現場で,納品物の設置のために脚立に乗ったところ,ひっくり返ってしまい,頭から落ちて大けがをしてしまったそうです。
今,病院に緊急搬送されているそうです。
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ええー,なんてこったー。
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こうして,Cさんは脳に重大な後遺障が残るほどの大けがを負うことになってしまいました。
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A社長は,社員に対し,工事現場での仕事の際,ヘルメットの着用を義務付けしていませんでした。
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Cさんの入院により,依頼主の仕事を納期どおりに終わらせることができませんでした。そのため,大口の契約を切られてしまいました。
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また,Cさんの事故は,労災事故と認定されました。
A社長は,労災保険の上乗せ保険の契約をしていなかったため,Cさんに対し,大怪我をしたことや,脳に重大な後遺障害が残ってしまったことの慰謝料として,別途,1000万円の補償を支払わなければならなくなってしまいました。
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はあ,大変なことになってしまった。会社の資金繰りが一気にできなくなってしまった。もう,こうなってくると,来月,社員さんへのお給料の支払いができない。
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そして,翌月になりました。
A社長は,社員を集めて言いました。
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みなさん,申し訳ありません,今月,みなさんのお給料が支払えません。
というのは,もともと,最近,売り上げが低迷しているうえに,Cさんの事故で,大口の契約を切られてしまいました。
そのうえ,Cさんへの補償の1000万円も支払った結果,みなさんへお支払いするお給料の分が残りませんでした。
本当にすみません。
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社員は,一同に怒りだしました。
ええー,そんな,社長,何言ってんですか。僕ら給料のために働いてんですから,払えないじゃないですよ。こっちが生活できませんよ。今すぐはらってくださいよ。だったら,社長の給料,僕らに回してくださいよ。
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い,いや,みなさんには今まで言ってなかったのですが,実は,僕は会社を立ち上げてから今まで一度も,自分の給料というか,役員報酬はとってないんです。ずっと赤字ですから,それどころか,ひたすら,会社に自分の貯金を投入して,お給料とか,取引先のお支払いをしてきたんです。すみません。僕の力不足です。もう貯金も尽きてしまいました。そこで,今から,銀行を回ってきますから,どうか,もうしばらく,時間をください。
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すみません,とりあえず,みなさんには,お給料を今までの半額だけ,支払わせていただきます。
こうして,しばらくの間,A社長は,一方的に,従業員への給料の支払いを半額にしてしまいました。
そして,ひたすら,たくさんの銀行,金融機関を回りました。
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こちら,とある金融機関の担当者です。
A社長,突然,借入をしたいと言われましても,今まで,御社と当行とでは,お借入れの経歴がありません。もともと,お取引があったのであればまた違ったかもしれませんが,突然,借入をしたいと言われましても,なかなか,お力になることが難しいのです。
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え,ええー,そんな,そこをなんとか。せめて従業員の給料は払いたいのです。そうしないと,僕,会社に戻れないんです。どうか,どうかお願いします。
しかし,A社長の願いもむなしく,貸付をしてくれる金融機関はありませんでした。
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はあ,こまった,もう貯金もないし,僕はいったい,どうしたらいいんだ。もう会社にいくのが怖いよ。みなさんに睨まれるのが怖くて仕方ないよ。あー,ああー,どうしよう。
どうしよう。
このように,A社長は,会社に行くことを考えると,動機が激しくなってしまっていました。
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こうして,なんと,A社長は,突然,音信不通になり,会社に来なくなってしまいました。
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こちらは,社員のBさんです。
ええー,なんてこった,社長が来なくなるなんて,いったいどうなってるんだ。みんな,社長の生活はともかく,おれたちの給料だけはなんとしても払ってもらわないといけない。みんなで力を合わせて,社長を探し出して,なんとしてでも払わせよう。この会社にある財産とか,店舗のテナントの敷金とか,少しでも換金できるものを探して,お金に変えよう。
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こうして,従業員たちは,一致団結して,財産探しを始めました,つまり,会社や,A社長の財産を探し回りました。
しかし,社内の設備は,いつの間にかリース物件になっていて,会社に所有権がないものになっていたり,店舗のテナントの敷金はすでに,賃料滞納で相殺の対象となっていました。
また,A社長の自宅も,自己所有物件ではなく,借家で,賃料滞納になっており,敷金などが返ってくる見込みはありませんでした。
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社員のBさんや,ほかの社員さんたちは集まって,話をしています。
ダメだ,まいったー。これはお手上げだ!!。
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A社長はどこにいるか,見つからないし,換金できるものもない。せめて,居場所がわかれば,破産とかの手続きだけでもしてほしいのに,そういうこともない。もうこれ以上待ってられない。みんな,それぞれ,次の仕事を探すしかない。今日で解散だー,うわー。