会社をめぐる法律では,
「えっ!!そんなことになっちゃうの???」
というケースがよくあります。
その一例を紙芝居にしてみました。
<就業規則の最低基準効>
こちらは,A君です。
A君は,食品卸売業のB社の正社員として入社し,働いていました。
A君は,もともと,第一志望の会社に入れず,B社に入社したという経緯から,あまり,仕事に対するモチベーションが高くありませんでした。
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他方,こちらは,B社長です。食品の卸売会社を経営しています。
B社長は,A君が勤務する会社の社長です。
B社長は,裸一貫で上京し,下積みを経て社長になりました。会社で,従業員のお祝い事をするのが好きで,従業員の誕生日はかならずお祝い会をしていました。
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また,B社長の会社では,就業規則に,家族手当,住宅手当,皆勤手当のほか,誕生日手当,配偶者誕生日手当,子供誕生日手当など,そのほかたくさんの手当を規定し,その就業規則に記載された金額を,従業員に支給していました。
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ある日のことです。
A君が,一番のお得意先のC社からの要望に応じなかったため,トラブルになりました。
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B社長は激怒しました。
おい,Aくん,君,なんてことをしてくれたんだ。お得意先のC社さん,とっても怒ってたぞ。わが社はサービスの悪い会社だと,言っているらしい。まったく,気を付けてくれよ。
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はあ,すんません。
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また,ある日のことです。
こちらは,A君の上司のDさんです。
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A君はDさんに反抗的な態度をとり,暴言を吐きました。
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ちょっとちょっとD先輩,D先輩の指示はいつも間違ってるんですよ。なんですか,このひどい業務指示は。仕事わかってないんじゃないっすか。こんなのやってらんないっすよ。
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な,なにー,いったいどういうことだ。すくなくとも,私は君の上司だぞ。上司に対して,その態度はなんだ
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A君は,このように,職場でいろいろな問題を起こしていました。そのため,職場では,多くの社員から,疎まれる存在になってしまいました。B社長のところにも,A君に対するクレームがたくさん届くようになりました。
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うーん,こまったなあ。A君に対するクレームが,社内だけでなく,社外もふくめて,いろいろなところから届くようになってしまった。
しかし,わが社は,従業員を大切にするのがモットーだ。だから,クビにしたりはしたくない。なんとか,A君にもっと成長してもらう方法はないかな。なんとかしないと,社内のクレームもこれ以上,抑えきれなくなってしまう。
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そうだ,思いついたぞ。うちの会社は,私の趣味もあって,いろんな手当をたくさん作ってる。
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そこで,今後,A君がトラブルを起こすたびに,この手当を一つずつ減らして,カットしていこう。
そうすれば,さすがのA君も反省するだろう。わが社のいろんな,たくさんある手当は,法律上は要求されない手当を,自主的に,たくさん,用意しているのだから,なくすのも自由だろう。
それで,A君が成長してきたら,徐々に,なくした手当を元に戻してあげよう。
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こうして,B社長は,A君に対して,今後,A君がトラブルを起こすたびに,手当を減らしていくこと,カットしていくことを提案し,A君はこれを了承しました。
念のため,B社長は,A君について,今後A君がトラブルを起こすたびに,手当を減らしていくことについて,誓約書を書いてもらいました。
さらに,念には念を入れて,契約書も作りました。
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そして,1年のときが過ぎました。
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なんてこったー,A君,全然反省しないよ。結局,トラブル起こしっぱなしで,わが社のたくさんある手当,A君だけ全部かっとされて,0になっちゃったよ。なんてこったー。
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その後も,A君は反省することはありませんでした。しかし,B社長は,とにかくA君を信じると言って,A君の成長を待ちました。
そして,2年のときがすぎました。
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ある日,突然,A君は,退職届を提出し,B社を退職しました。
そして,一か月後のことです。
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こちらは,事務職員のD子さんです。
社長、大変です。裁判所から、書類がきました。
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なかみは、訴状です。原告は、Aくん、被告は会社となっています。
A君は,カットされた手当について,賃金不払いをされたので,これまでの不払い分の賃金300万円を支払えと主張しているそうです。
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なにー、いったいどういうことだ。なんで、我が社が被告にされるんだ。 納得がいかないぞ。A君の態度が問題なんだし,ちゃんとA君が納得して,誓約書も契約書も作ったんだから,問題ないだろう。
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こうして、裁判所での裁判が始まりました。
裁判は、一年かかりました。
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一年後、いよいよ判決の日になりました。
傍聴席では、判決をまつ人が集まっています。
静粛に,判決を言い渡します
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判決主文 会社は,Aくんに対し,300万円支払いなさい。
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ええ、我が社の完全敗訴じゃないか。なぜ、我が社がまけてしまったんだー なぜだー