2019年 5月 の投稿一覧

就業規則の周知義務:紙芝居型ブログ ブログ#133

 会社をめぐる法律では,
ほんのちょっとした手続きのし忘れで,
ひどいことになってしまうこと,
よくあります。

 その一例を紙芝居にしてみました。

<就業規則の周知義務>

 こちらは,Xさんです。

 Xさんは,Y社で,正社員として入社し,働いていました。

 他方,こちらは,Y社長です。

 Y社長は,Xさんが勤務する会社の社長です。

 Y社長は,会社の就業規則を変更し従業員に対する懲戒解雇の規定を,新設することを考えていました。

 うーん,うちも,徐々に従業員が多くなってきたので,就業規則とか,会社のルール整備をしっかりしないとな。

特に,会社内の規律・秩序を乱す従業員に対しては,最悪の場合は懲戒解雇もできるように,就業規則を,新しくしておかなければならないな。

こうして,Y社長は,会社の就業規則を改訂し,懲戒解雇の規定を新設しました。

 よーし,これで,万が一のときには,従業員に対して,問題なく懲戒解雇ができるな。準備は万端だ。

 しかし,このとき,Y社長は,就業規則の中身を新しくしたものの,その就業規則を社内に備え置いたりするなど,従業員に周知することを忘れてしまっていました。

 ある日のことです。

 Xさんが,お得意先のA社からの要望に応じなかったため,トラブルになりました。

 おい,Xくん,君,なんてことをしてくれたんだ。お得意先のA社さん,とっても怒ってたぞ。わが社はサービスの悪い会社だと,言っているらしい。まったく,気を付けてくれよ。

 はあ,すんません。

 また,ある日のことです。

 こちらは,Xさんの上司のBさんです。

Xさんは,上司のBさんに反抗的な態度をとり,暴言を吐きました。

 ちょっとちょっとB先輩,B先輩の指示は間違ってるんですよ。なんですか,このひどい業務指示は。仕事わかってないんじゃないっすか。こんなのやってらんないっすよ。

 なにー,いったいどういうことだ。すくなくとも,私は君の上司だぞ。上司に対して,その態度はなんだ

 Xさんは,職場でこういった態度を取っていたことから,とうとう,会社から,懲戒解雇されることになってしまいました。

 しかし,Xさんは納得がいかず,Xさんは裁判を起こしました。

 こちらは,裁判所の裁判官です。

 静粛に。今から裁判を始めます。

 まず,Xさんは次のような主張をしました。

裁判長,今回,新しくなった会社の就業規則は,会社に備え置かれていませんでした。

したがって,この就業規則は周知の手続がされていなかったということです。

そのため,今回の就業規則に基づく懲戒解雇は無効です。

 これに対して,Y社長は,次のように反論しました。

 裁判長,就業規則は,労働者の過半数代表の同意を得たり,労働基準監督署長への届け出をするなど,ちゃんと作られたものです。そのため,会社に備え置くのを忘れていたくらいでは無効になるなんておかしいです。

 そのため,Xさんに対する懲戒解雇は有効です。

 このように,XさんとY社長の主張は,真っ向から対立しました。

 それでは,これから,判決を言い渡します。

 主文,Xさんが,Y社に対し,労働契約上の地位にあることを,確認する。

やったー,ぼくの主張を認めてもらえたんだ

 ええー,そんな,そんなのおかしいぞ。いったい,どういうことなんだ

 説明します。

 会社が就業規則を作成したり,その内容を変更した場合には,労働者代表の意見を聞いたり,労働基準監督署長の届けるほか,従業員への周知の手続をしなければなりません。

 今回は,その周知の手続をしていなかったため,周知の手続をしていなかった就業規則を根拠とする懲戒解雇は,認められません。

 ええー,そんなー

就業規則の最低基準効:紙芝居型ブログ ブログ#132

 会社をめぐる法律では,
「えっ!!そんなことになっちゃうの???」
というケースがよくあります。
 
 その一例を紙芝居にしてみました。

<就業規則の最低基準効>

 こちらは,A君です。

 A君は,食品卸売業のB社の正社員として入社し,働いていました。

 A君は,もともと,第一志望の会社に入れず,B社に入社したという経緯から,あまり,仕事に対するモチベーションが高くありませんでした。

 他方,こちらは,B社長です。食品の卸売会社を経営しています。

 B社長は,A君が勤務する会社の社長です。

 B社長は,裸一貫で上京し,下積みを経て社長になりました。会社で,従業員のお祝い事をするのが好きで,従業員の誕生日はかならずお祝い会をしていました。

 また,B社長の会社では,就業規則に,家族手当,住宅手当,皆勤手当のほか,誕生日手当,配偶者誕生日手当,子供誕生日手当など,そのほかたくさんの手当を規定し,その就業規則に記載された金額を,従業員に支給していました。

 ある日のことです。

 A君が,一番のお得意先のC社からの要望に応じなかったため,トラブルになりました。

 B社長は激怒しました。

おい,Aくん,君,なんてことをしてくれたんだ。お得意先のC社さん,とっても怒ってたぞ。わが社はサービスの悪い会社だと,言っているらしい。まったく,気を付けてくれよ。

 はあ,すんません。

 また,ある日のことです。

 こちらは,A君の上司のDさんです。

A君はDさんに反抗的な態度をとり,暴言を吐きました。

 ちょっとちょっとD先輩,D先輩の指示はいつも間違ってるんですよ。なんですか,このひどい業務指示は。仕事わかってないんじゃないっすか。こんなのやってらんないっすよ。

な,なにー,いったいどういうことだ。すくなくとも,私は君の上司だぞ。上司に対して,その態度はなんだ

 A君は,このように,職場でいろいろな問題を起こしていました。そのため,職場では,多くの社員から,疎まれる存在になってしまいました。B社長のところにも,A君に対するクレームがたくさん届くようになりました。

うーん,こまったなあ。A君に対するクレームが,社内だけでなく,社外もふくめて,いろいろなところから届くようになってしまった。

しかし,わが社は,従業員を大切にするのがモットーだ。だから,クビにしたりはしたくない。なんとか,A君にもっと成長してもらう方法はないかな。なんとかしないと,社内のクレームもこれ以上,抑えきれなくなってしまう。

そうだ,思いついたぞ。うちの会社は,私の趣味もあって,いろんな手当をたくさん作ってる。

そこで,今後,A君がトラブルを起こすたびに,この手当を一つずつ減らして,カットしていこう。

そうすれば,さすがのA君も反省するだろう。わが社のいろんな,たくさんある手当は,法律上は要求されない手当を,自主的に,たくさん,用意しているのだから,なくすのも自由だろう。

それで,A君が成長してきたら,徐々に,なくした手当を元に戻してあげよう。

 こうして,B社長は,A君に対して,今後,A君がトラブルを起こすたびに,手当を減らしていくこと,カットしていくことを提案し,A君はこれを了承しました。

念のため,B社長は,A君について,今後A君がトラブルを起こすたびに,手当を減らしていくことについて,誓約書を書いてもらいました。

さらに,念には念を入れて,契約書も作りました。

 そして,1年のときが過ぎました。

なんてこったー,A君,全然反省しないよ。結局,トラブル起こしっぱなしで,わが社のたくさんある手当,A君だけ全部かっとされて,0になっちゃったよ。なんてこったー。

 その後も,A君は反省することはありませんでした。しかし,B社長は,とにかくA君を信じると言って,A君の成長を待ちました。

 そして,2年のときがすぎました。

 ある日,突然,A君は,退職届を提出し,B社を退職しました。

 そして,一か月後のことです。

 こちらは,事務職員のD子さんです。

社長、大変です。裁判所から、書類がきました。

> 

なかみは、訴状です。原告は、Aくん、被告は会社となっています。

A君は,カットされた手当について,賃金不払いをされたので,これまでの不払い分の賃金300万円を支払えと主張しているそうです。

 なにー、いったいどういうことだ。なんで、我が社が被告にされるんだ。 納得がいかないぞ。A君の態度が問題なんだし,ちゃんとA君が納得して,誓約書も契約書も作ったんだから,問題ないだろう。

 こうして、裁判所での裁判が始まりました。

 裁判は、一年かかりました。

 一年後、いよいよ判決の日になりました。

 傍聴席では、判決をまつ人が集まっています。

 静粛に,判決を言い渡します

判決主文 会社は,Aくんに対し,300万円支払いなさい。

 ええ、我が社の完全敗訴じゃないか。なぜ、我が社がまけてしまったんだー なぜだー