2019年 6月 の投稿一覧

賃金の一方的減額:紙芝居型ブログ ブログ#138

 お給料の額は,会社が決める,
これって正しいでしょうか?
 入社のときは正しいですが,
やってしまいがちなケース,
紙芝居にしてみました。

<賃金の一方的減額>

 こちらは,A君です。

 A君は,食品の卸売会社に,正社員として入社し,働いていました。

 A君は,もともと,第一志望の会社に入れず,この会社に入社したという経緯から,あまり,仕事に対するモチベーションが高くありませんでした。

 他方,こちらは,B社長です。

 B社長は,A君が勤務する食品の卸売会社の社長です。

 B社長は,裸一貫で上京し,下積みを経て社長になりました。会社で,従業員のお祝い事をするのが好きで,従業員の誕生日はかならずお祝い会をする,そんな社長でした。

 ある日のことです。

 A君が,お得意先のC社からの要望に応じなかったため,トラブルになりました。

 おい,Aくん,君,なんてことをしてくれたんだ。お得意先のC社さん,とっても怒ってたぞ。わが社はサービスの悪い会社だと,言っているらしい。まったく,気を付けてくれよ。

 はあ,すんません。

 また,ある日のことです。

 こちらは,A君の上司のDさんです。

A君はDさんに反抗的な態度をとり,暴言を吐きました。

 ちょっとちょっとD先輩,D先輩の指示はいつも間違ってるんですよ。なんですか,このひどい業務指示は。仕事全然わかってないんじゃないっすか。こんなのやってらんないっすよ。

な,なにー,いったいどういうことだ。すくなくとも,私は君の上司だぞ。上司に対して,その態度はなんだ

 A君は,このように,職場でいろいろな問題を起こしていました。そのため,職場では,多くの社員から,疎まれる存在になってしまいました。B社長のところにも,A君に対するクレームがたくさん届くようになりました。

うーん,こまったなあ。A君に対するクレームが,社内だけでなく,社外もふくめて,いろいろなところから届くようになってしまった。

しかし,わが社は,従業員を大切にするのがモットーだ。だから,クビにしたりはしたくない。なんとか,A君にもっと成長してもらう方法はないかな。なんとかしないと,社内のクレームもこれ以上,抑えきれなくなってしまう。

うーん,そうだ!こうなったらやむを得ん。

今後,A君がトラブルを起こすたびに,給料を1000円ずつ減額していこう。

そうすれば,さすがのA君も反省するだろう。それで,A君が成長してきたら,徐々に,また,元に戻してあげよう。

 こうして,B社長は,A君に対して,今後,A君がトラブルを1回起こすたびに,トラブル1回につき,給料を1000円ずつ減額していくことを説明しました。

 しゃ,社長,そりゃないっすよ。勘弁してくださいよ。そりゃ,あんまりっすよ。

 なにを言っとるんだ。今,この職場の状況考えてみろ。誰も君の味方をするものなんて,いないんだぞ。それでも,わしは,誰一人,クビにはしたくないし,君にも成長してもらいたいから,こうやって苦肉の策をとってるんだ。

 問題がなくなればまた元に戻すから,がんばりなさい。

 いやいや,まじ,勘弁してくださいよ。自分,妻も子供もいますし,マジできついっすよ。なんとか,お願いしますっすよ

 いーや,ダメだ!!

 こうして,A君は最後まで納得しませんでしたが,B社長はA君の反対を押し切り,A君がトラブルを起こすたびに,A君の給料を減額していきました。

 その後,残念ながら,A君はたびたびトラブルを起こし,そのたびに,給料を減らされていきました。そして,1年のときが過ぎました。

なんてこったー,A君,全然反省しない。結局,トラブル起こしっぱなしで,どんどん給料下げたけど,まったく反省しない。困ったなぁ。

 その後も,B社長は,とにかくA君を信じると言って,A君の成長を待ちました。

 そして,2年のときが過ぎました。

 ある日,突然,A君は,退職届を提出し,B社を退職しました。

 そして,一か月後のことです。

 こちらは,事務職員のD子さんです。

社長、大変です。裁判所から、書類がきました。

> 

なかみは、訴状です。原告は、Aくん、被告は会社となっています。

A君は,減額された給料について,賃金不払いをされたので,これまでの不払い分の賃金300万円を支払えと主張しているそうです。

 なにー、いったいどういうことだ。なんで、我が社が被告にされるんだ。 納得がいかないぞ。A君の態度が問題なんだから,しょうがないだろう。それにA君の給料の額を決めるのは会社なんだから,全く問題ないじゃないか。。

 こうして、裁判所での裁判が始まりました。

 裁判は、一年かかりました。

 一年後、いよいよ判決の日になりました。

 傍聴席では、判決をまつ人が集まっています。

 静粛に,判決を言い渡します

判決主文 会社は,Aくんに対し,300万円支払いなさい。

 ええ、我が社の完全敗訴じゃないか。なぜ、我が社がまけてしまったんだー なぜだー

モデル フジ興産事件:紙芝居型ブログ ブログ#137

   

モデル事件:フジ興産事件

 今回は,労働法判例百選にも掲載されている,就業規則の周知に関する判例として有名な,最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決「フジ興産事件」をモデルにしたストーリーを,紙芝居型で,お伝えします。(あくまでモデルであり,実際の事件とは異なる部分があります。)

 こちらは,Xさんです。

 Xさんは,Y社で,正社員として入社し,働いていました。

 他方,こちらは,Y社長です。

 Y社長は,Xさんが勤務する会社の社長です。

 Y社長は,会社の就業規則を変更し従業員に対する懲戒解雇の規定を,新しくすることを考えていました。

 うーん,うちも,徐々に従業員が多くなってきたので,就業規則とか,会社のルール整備をしっかりしないとな。

特に,会社内の規律・秩序を乱す従業員に対しては,最悪の場合は懲戒解雇もできるように,就業規則を,新しくしておかなければならないな。

こうして,Y社長は,会社の就業規則を改訂し,懲戒解雇の規定を新設しました。

 よーし,これで,万が一のときには,従業員に対して,問題なく懲戒解雇ができるな。準備は万端だ。

 しかし,このとき,Y社長は,就業規則の中身を新しくしたものの,その就業規則を社内に備え置いたりするなど,従業員に周知することを忘れてしまっていました。

 ある日のことです。

 Xさんが,お得意先のA社からの要望に応じなかったため,トラブルになりました。

 おい,Xくん,君,なんてことをしてくれたんだ。お得意先のA社さん,とっても怒ってたぞ。わが社はサービスの悪い会社だと,言っているらしい。まったく,気を付けてくれよ。

 はあ,すんません。

 また,ある日のことです。

こちらは,Xさんの上司のBさんです。

 Xさんは,上司のBさんに反抗的な態度をとり,暴言を吐きました。

 ちょっとちょっとB先輩,B先輩の指示はいつも間違ってるんですよ。なんですか,このひどい業務指示は。全然仕事わかってないんじゃないっすか。こんなのやってらんないっすよ。

 なにー,いったいどういうことだ。すくなくとも,私は君の上司だぞ。上司に対して,その態度はなんだ

 Xさんは,たびたび,職場でこういった態度を取っていたことからその後,,とうとう,会社から,懲戒解雇されることになってしまいました。

 Xさんは納得がいかず,Xさんは裁判を起こしました。

 こちらは,裁判所の裁判官です。

 静粛に。今から裁判を始めます。

 まず,Xさんは次のような主張をしました。

 裁判長,今回,新しくなった会社の就業規則は,会社に備え置かれていませんでした。

したがって,この就業規則は周知の手続がされていなかったということです。

そのため,今回の就業規則に基づく懲戒解雇は無効です。

 これに対して,Y社長は,次のように反論しました。

裁判長。就業規則は,労働者の過半数代表の同意を得たり,労働基準監督署長への届け出をするなど,ちゃんと作られたものです。そのため,会社に備え置くのを忘れていたくらいでは無効になるなんておかしいです。

 そのため,Xさんに対する懲戒解雇は有効です。

 このように,XさんとY社長の主張は,真っ向から対立しました。

 それでは,これから,判決を言い渡します。

 主文,Xさんが,Y社に対し,労働契約上の地位にあることを,確認する。

やったー,ぼくの主張が認めてもらえたんだ

 ええー,そんな,そんなのおかしいぞ。いったい,どういうことなんだ

 説明します。

 会社が就業規則を作成したり,その内容を変更した場合には,労働者代表の意見を聞いたり,労働基準監督署長の届けるほか,従業員への周知の手続をしなければなりません。

 今回は,その周知の手続をしていなかったため,周知の手続をしていなかった就業規則を根拠とする懲戒解雇は,認められません。

 ええー,そんなー