2019年 1月 の投稿一覧

不当解雇問題:紙芝居型ブログ・ブログ#64

 今回は,
よくある不当解雇裁判の流れについて,

 紙芝居型でお伝えします。

 今回は,通常版と異なり,

問題社員バージョンです。

 (学習の便宜のため,
実際の裁判とは異なる部分があります)

 Aくんは、新卒で、大手の食品の卸売り会社に入社しました。

 A君は,元々,仕事よりもプライベートを充実させたいと思っているタイプで,あまり仕事に熱心な性格ではありませんでした。

 実は,A君は,関連会社の社長の息子であり,父親のコネで入社した社員でした。そのため,A君は,自分のことをほかの社員と違って特別であると思っていました。

 あー,また月曜日が来ちゃったなぁ。しょうがない,今日も会社いくか。

 A君はこんな調子で働いていたため,先輩の指導もあまり熱心に聞いておらず,いつもミスを繰り返していました

 ある日、会社にいたA君に、電話がかかってきました。

 Aくん、取引先のB社さんから電話ですよ。なんだか怒っている様子です。

 ええ、僕ですか。またなんかやっちゃったかな。はい,もしもし

 Aくん,また,納品ミスだぞ。これで5か月連続じゃないか。

すんません。

なんだその謝り方は。なっとらんぞ。

す,すみませんでした。

 A君は,社長に呼び出されました。

 おい,A君、聞いたぞ、君はまた納品ミスをしたそうじゃないか。

 B社さんとても怒っていたぞ。もしかすると取引を断られてしまうかもしれない。

 どうしてくれるんだね。どう責任をとるつもりだ。

 すんませんね

 なんだその謝り方は。これだから,最近の若者はなっとらんのだ。

 A君,君ねぇ。納品ミス5か月連続なんて,わが社の創業百年の歴史の中で,はじめての事態だぞ。わが社は,とにかく人を大事にする経営をモットーにしているから,とにかく,社員を信じて,処分とかはしないようにしている。

だから,わが社では,過去,一度も,社員に対して,戒告処分の一つもしたことはない。もちろん,君に対しても,何も処分したりしていないけれども,ほかの会社だったらこうはいかんのだぞ

 すんませんでした。

 A君,これは最後の警告だ。次納品ミスしたら,君は即,クビだぞ。絶対だからな。

私は警告したからな。

 はい,わかりました

 A君は,内心,こう思っていました。

 全く,小言がうるさいんだよ。社長は。納品ミスくらいでえらそうなこと言っちゃってさ。クビだとか言っちゃってさ。でも,オレ,まだこの会社入ったばかりだし,今まで,なんにも,正式な処分とかされたことないから,さすがに,いきなりクビってことはないだろうから,まだまだミスしても大丈夫だろうな。

 それから1か月後のことです。

 会社にいたA君に、電話がかかってきました。

 Aくん、取引先のB社さん電話ですよ。なんだか怒っている様子です。

 ええ、僕ですか。またなんかやっちゃったかな。

 Aくん,君,またやってくれたね。また,納品ミスだぞ。これで6か月連続じゃないか。

 すいません、申し訳ございません。

 さすがにもうあきれたよ。残念だけど、君との取引は考えさせてもらう。

 そこをなんとか、どうかお許しください。

 いやいや、用件は以上だよ。

 あー、またやっちゃたか。まあ適当に謝り倒しておけば問題ないだろ。

 おい、Aくん、聞いたぞ、君はまた納品ミスをしたそうじゃないか。

 B社さんとても怒っていたぞ。もしかすると取引を断られてしまうかもしれない。

 私は,先月,警告したよな。次,納品ミスしたらクビだと。残念だが、君にはやめてもらうしかないね。

 またまた,これくらいでクビなんて,社長,冗談きついっすよ。

ふざけるなよ。私は,本気だ。もうわが社に君の居場所はない。

そんな、どうか許してください。これから心を入れ替えてがんばりますから。自分,先月、こどもがうまれたばかりですし,クビなんて,かっこつかないですよ。どうか、勘弁してください。

 うるさい。6ヶ月連続で納品ミスをしておきながら何を言っているんだ。これまでどれだけ大目に見てきたと思ってるんだ。きみはクビだ。

君にはね,30日分の給料を上乗せして払う。そうすれば、会社は君をクビにできるんだ。わかってるだろう。

 そこをなんとか。

 うるさい、くびだ

 こうして、Aくんは、泣きながら、退社しました。

 二ヶ月後

 あー青空の下のゴルフは気持ちがいいねぇ。うーん、我ながらナイスショット

 ブルルルルル

 おや、電話だ。秘書のC子くんからだ。もしもし,なんだね。

 社長、大変です。裁判所から、書類がきました。

 なかみは、訴状です。原告は、Aくん、被告は会社となっています。

A君は不当解雇だと主張しているそうです。

 なに、いったいどういうことだ。なんで、我が社が被告にされるんだ。 納得がいかないぞ。A君のミスが原因なんだし,ちゃんと30日分の給料も上乗せしたんだし,不当解雇なはずがない。

 こうして、東京地方裁判所での裁判が始まりました。

 なんだか、裁判なんて,おおごとになってしまったけれども,今まで,あれだけ,A君のことは大目に見て,みんなでA君をカバーしても,ダメだったのだから,会社は限界まで努力したと認めてもらえるはずだ。

それに,30日分の給料も渡したしな。これでわが社が負けるはずがないだろう。

 裁判は、一年かかりました。

 一年後、いよいよ判決の日になりました。

 傍聴席では、判決をまつ人が集まっています。

 静粛に,判決を言い渡します

判決主文 Aくんには,会社の従業員としての地位を,認めます。

 また、会社は、A君にたいし、解雇から本日までの一年分の賃金500万円をはらいなさい。

 ええ、我が社の完全敗訴ではないか。しかも、この一年間の給料500万円を払えなんて、額が多すぎる。

 なぜ、我が社がまけてしまったんだー なぜだー

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 以上のような,

ひどいケースであっても,

すぐに解雇,というのは,

裁判ではなかなか認められないことが多いです。

 解雇のまえに取れる手段は,

しっかり取っておく必要があります。

 解雇の手続きは,

慎重に行う必要がありますね。

30日分で解雇できない!解雇予告手当金のよくある誤解 ブログ#63

 よく、経営者の方から、

解雇予告手当を支払えば、

解雇できますよね?と聞かれます。

 しかし、そうではありません。

 意外と知られていないルールがあるのです。

 というのは,

労基法20条1項は、

「使用者は、

労働者を解雇しようとする場合においては、

少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。

三十日前に予告しない使用者は、

三十日以上の平均賃金をしはらわなければならない。」とさだめています。

 また同条の2項は、

「前項の予告は、

一日について平均賃金を支払った場合においては、

その日数を短縮することができる。」

と規定しています。

 つまり、解雇の意思表示をする際は、

30日の解雇予告期間を置くか、

そうでない場合は、

これに満たない期間分の

解雇予告手当を支払わなければならない

ということです。

 このように,まず,解雇が有効か無効かの議論の前に,

まずもって,

 解雇の意思表示をする際のルールがあるということです。

 そのうえで、

解雇の意思表示ができたとしても、

 さらに、

当該解雇が有効かどうかの問題は、

別途、不当解雇訴訟等が提起された場合、

検討されることになるのです。

 解雇は、

容易にできるものではなく、

客観的合理的な理由や、

社会通念上の相当性が必要です。

 もし,不当解雇であると主張され,

裁判で会社負けた場合,

その従業員さんは従業員としての地位が認められ、

 また,係争期間中のお給料を

100%支払わなければならない

可能性もあります

(かなり高額になることがあります。

 ケースバイケースで,例外もあります。)。

 解雇をすることは,相当,

慎重に判断しなければなりません。

 以上の理由で,

解雇予告手当を支払えば

解雇できるというわけではない

ということ,お伝えしたいと思います。

 『知らない』ことで,

大変なことになってしまう可能性があるということを,

お伝えしたいと思います。