経営相談、ビジネスコーチングの場面で、
経営者様の会社の財務書類を3年分ほど拝見して、
売上高、粗利率、利益率、現金保有高、借入金、キャッシュフロー
などの推移から、一定の方向性について、
アドバイスさせていただくことは多いですが、
  
 それでも、それを踏まえても、
経営者の方が逆の方向に進むと決断されたときは、
その選択された方向で進めてみると、
 
 実際、その経営者の方の読み通りになったり、
結果オーライになるという経験がよくありました。
 
 そのたびに、驚くとともに、
経営には数値で測れない事が
多くあるのだろうと思うとともに、
それはいったい何なんだろう???
と疑問をもっていました。
 
 その答えの一つが、
本書にあるように思います。

 
 というのは、
本書によると、
 
●グローバル企業が世界的に著名な
アートスクールに幹部候補を送り込んでいるそうで
それは、これまでのような
分析・論理・理性に軸足を置いた経営、
いわば「サイエンス重視の意思決定」では、
今日のように複雑で不安定な世界において
ビジネスのかじ取りをすることはできないことを
わかっているから、

●精密なマーケティングスキルを用いて
論理的に機能的優位性や価格競争力を形成する能力よりも、
人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような
感性や美意識が重要になる

●本書では「経営における美意識」という言葉を、
これらの様々な企業活動の側面における
良い・悪いを判断するための認識基準として用いる
例えば
・従業員や取引先の心を掴み、
 ワクワクさせるような「ビジョンの美意識」
・自社の強みや弱みに整合する、
 合理的で効果的な「経営戦略の美意識」
・顧客を魅了するコミュニケーションや
 プロダクト等の「表現の美意識」
 
  
 このお話を聞いて、なるほど、
まさに、経営者の方の「直感」による判断が奏功するのは、
そういうことだったのか、
と腹落ちするとともに、
  
 ついつい頭でっかちになりがちで、
他社情報や情勢に関する情報等を
収集してそれを重視しがちな自分には、
大いに反省しなければならない
ことだと思いました。
 
 さらに、上述のように、
経営相談、ビジネスコーチングの場面において、

 現場の情報を一番持っているのは
クライアント自身なので、
 
 たとえ数値等から予測される方向性やセオリーと違っていても、
最後はクライアント自身の直感・決断を重視するほうが、

 仮にその時点では、うまくいかなかったとしても、
そこから得られる経験値、
改善のタネは多いように思われ、
 
 また、やってみて、実行してみて、
はじめてわかる情報・得られる経験値も多いと思われるため、
 
 効果的な改善策を思いつく可能性が高くなり、
改善スピードも速くなるのではないかと思われ、
 
 そのことからも、
経営相談・ビジネスコーチングの場面では、
一定の結論を押し付けるのではなく、
 
 いかに、クライアントご本人が
様々な角度からの分析がしやすくなるよう、
視点を増やしたり、
着眼点を提供したり、
 
 ご自身でご自身の経験・現場情報に基づく
「気づき」を得ていただいて、

 行動へのモチベーションを高めていただけるよう、
サポートすることがが重要なのではないかと、
再認識しました。
 
 なお、
この場合の美意識を高めるトレーニングとしては、
美術の歴史や知識を暗記するというようなことではなく、
 
 観察眼、観る力を鍛えることだそうで、
VTS(VisualThinkingStrategy)
という、ビジュアルアートを用いたワークショップによる
鑑賞力教育だそうです。
 徹底的に作品を見て、感じて、言葉にする、とのこと、
  
 これを聞いて思ったのは、
美術作品を見て、感じて、言葉にすることには
見方や感じ方は人それぞれで絶対の正解がないので、
それを繰り返しトレーニングすることが、

 ビジネスに共通する、
つまり、
「誰にも正解がわからない」ものであるビジネスに
取り組むことと上記のVTSには、
共通する要素があるのかな、
と思いました。
 
 
 本書はとてもおもしろく、
絵心が全くない、美術が苦手な私でも、
アートに近づいても良いのかという気づきも
いただきました。
  
 ありがとうございました。