ビジネス書紹介23「JALの心づかい」:ブログ#299

 経営相談・ビジネスコーチングの場面において、
コロナの影響で、落ちてしまった業績をいかに
回復させるか、というご相談が増えています。
 
 経営者の方と一緒に、
あれこれ知恵を絞ってアイデア出しをしているのですが、
 
 そのようなときのために、
日頃からアイデア出しの着眼点を
増やしたいと思っているところ、
 
 奇跡的なV字回復を果たした
JALの例が参考になるのではと思いました。
 
 JALは、
2010年1月、2兆3千億円という巨額の負債を抱えて倒産し、
会社更生法に基づく手続きを申請しました。
 それが、なんと、一年後には、
過去最高の営業利益1800億円を達成、
二年後には営業利益2000億円を達成、
されました。
 
 今、コロナで大変な思いをしている人にとっても、
このV字回復劇は、勉強になることが沢山ある
のではないかと思いました。
 
 そこで、
 
「JALの心づかい~
  グランドスタッフが実践する究極のサービス」
上坂徹(河出書房新社)
 
を拝読しました。
 
 著者の上坂徹先生は、
経営、金融、ベンチャーをテーマに、
雑誌や書籍で幅広く執筆やインタビューを手掛けておられ、
著書に、ベストセラーとなった「プロ論。」や、
 
「あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNO.1大学になったのか?」
「僕がグーグルで成長できた理由」など、
多数の著書があります。
 
 本書執筆にあたり、
様々な取材をされたそうです。
 
 私なりの理解ですが、
以下、特に本書で興味深く感じたのは、
 
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「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社になる」
というビジョンがあって、
 
 そのために、お客さまを中心に発想する、
 そのために、まずは社員を大切にする、
 
 第一は安全、次に人財への教育投資に力をれる、
 社員は会社の「財」(たから)だから、

とのこと。
  
 また、
教育投資が何を変えたのかというと、
実は働くスタッフのモチベーション、
 
 これこそがJALを大きく変えたもの、
 
 教育を通じてスキルが上がれば、
お客様に喜んでいただく機会が増える、
それは自身の喜びにもつながる、
それがまた好印象をつくる、
そんな好循環が生まれる、
 
 教育の中心に据えられているものが、
「JALフィロソフィ」、
 
 これがすべての思考と行動のベースとなる、
 
とのこと。
 
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 JALフィロソフィは、
経営破綻から1年後の2011年1月19日に発表された
社員の行動哲学ともいうべきもので、
40項目あり、JALのウェブサイトでも紹介されています。
 
 フィロソフィといえば、
京セラフィロソフィが有名ですが、
JALの再生をリードしたのは、
まさに京セラ創業者の稲森和夫先生で、
稲森先生がJAL再生の課題としてとらえていたのが、
全社員の意識改革だったそうです。
 
 そこで、JALフィロソフィが策定され、
策定するのみならず、
グループ全社員が年に3回JALフィロソフィを学ぶ教育を受講したり、
JALフィロソフィに即した行動について発表する「発表会」を開催したり、
役職が上になるほどJALフィロソフィ教育の機会が増え、
管理職3500人は、年に1回から2回、二時間半のリーダー教育、
部長級社員や役員は毎月3時間のリーダー勉強会があったり、

 ほかにも、職場によっては、
JALフィロソフィの一項目を
「今日のJALフィロソフィ」に設定して、
「こう実行していこうと思う」
「こうすればJALフィロソフィに沿った行動になると思う」
といった発表を毎日のように行っているそうです。
 
 経営相談・ビジネスコーチングの場面において、
人財育成に力をいれたい、
全社員の方向性を定めていきたい、
そのために、
ビジョンや行動指針を策定したいというご相談も多く、
 
 しかし、
昔、実際に作ってみたもののそのままになっている、
というご相談も多くあり、
 
 「策定」するのみならず「浸透」も大切であるところ、
JALではここまで徹底されていることから、
いかに「浸透」させることが重要であるか、
再認識しました。
 
 私の経験談ですと
昔、とある企業様で、
女性社員さんの発案で、
行動指針を名刺サイズのカードに印刷して、
ラミネート加工をして、
毎朝復唱しようという提案がなされ、
 
 実施してみたら、
格段に社員さんの意識共有がしやすくなった、
ということがありましたので、
やはり、会社様ごとにフィットした
「浸透方法」を模索し続ける必要があると思いました。
 
 また、本書で紹介されていたエピソードとして
興味深いと思ったのは、
 
 福島正伸先生の「メンタリング・マネジメント」
でも紹介されていた「ミラー効果」に近い・類似するエピソードで、

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●人財育成担当の教官が、
なかなか笑顔が出せない訓練生が多いクラスを担当した際、
 
 訓練生から笑顔が出なくて悩んでいたところ、
 
 まず、自分が笑顔が出ていないことに気づき、
まず教官が訓練生の成長を楽しんで教育するようにしたところ、
それが訓練生に伝わるようになった、
 
●JALフィロソフィが訓練内容に入ってきた当初、
なかなか訓練生に伝わっていきにくかったものの、
だんだんわかってきたのは、
 
 暗唱したり、書いたりしたところで、
伝わっていくものではなく、
 
 教える教官たちがまさに
JALフィロソフィの体現者でなければいけない、
まず、自分たちが本気になる必要があった、
 
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 とのエピソードが印象的でした。
 
 JALでは、
一人ひとりが、本気で、
JALフィロソフィの体現者になっているからこそ、
現場で輝いているし、
それが次世代にも伝わっていくのだなぁと
思いました。
 
 上記の行動指針カードを発案した女性社員さんのエピソードも、
カードを作ることに意味があるというより、
 
 本気になって行動した彼女に、
まわりが影響を受けたのかもしれないと思いました。
 
 そのほか、
興味深いエピソードやインタビューが沢山掲載されている本書、
とても勉強になりました。
 
 ありがとうございました。 

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